ATMもソープ容器も「ディスペンサー」。言葉の語源から工業用装置までたどる

自動車部品メーカーで18年、生産技術をやってきた柏木です。
在職中は、ECUや車載LEDの接着・封止工程を何本も立ち上げました。

工場で「ディスペンサー」と言えば、接着剤を決まった量だけ出す装置のことです。
ところが家に帰ると、洗面所のソープ容器も同じ名前で呼ばれています。
同じ言葉なのに指すものがずいぶん違うので、語源から調べてみました。

もとは「量って配る人」を指す言葉だった

英語の語源辞典Online Etymology Dictionaryのdispenserの項目によると、もとになったのはラテン語の dispensare です。
意味は「重さを量って分け与える、支払う」でした。

英語のdispenserは1400年ごろから使われています。
ただ、当時は機械ではなく人を指す言葉でした。
家計を取り仕切る人や、物資を配る係のことです。

「決まった量を出す容器」という意味で使われ始めたのは1918年からです。
人がやっていた「量って配る」仕事を、のちに容器や機械が引き受けた、と考えると覚えやすいと思います。

ATMもソープ容器も、同じ言葉で呼べる理由

ケンブリッジ英語辞典はdispenserを「何かを取り出せる機械や容器」と説明しています。
用例に並んでいるのが、cash dispenser(ATM)とsoap dispenser(ソープ容器)です。

身近なディスペンサー出すもの
キャッシュディスペンサー現金
ソープディスペンサー石けん液
ドリンクディスペンサー飲み物
テープディスペンサーテープ

どれも、中身を必要な分だけ取り出すための道具です。
語源の「量って配る」がそのまま残っています。

日本では、1969年に磁気カードで動く現金自動支払機が住友銀行で稼働しました。
オムロンの沿革に、この機械を「オフライン・キャッシュ・ディスペンサー」と呼んだ記録があります。

全国銀行協会の解説では、CD(現金自動支払機)は引き出しなどに特化した機械とされています。
預け入れもできるATMと違い、CDはお金を出すのが仕事です。
名前どおりのディスペンサーだったわけです。

工場のディスペンサー装置は「量の正確さ」が仕事

製造業でいうディスペンサーは、日本語で「液体定量吐出装置」と呼ばれます。
主な作業は次のとおりです。

  • 部品同士を貼る「接着」
  • 基板や電子部品を樹脂で覆う「封止」
  • すき間を樹脂で埋める「充填」
  • シール材を線状に塗る「線引」

現場で吐出量がずれたとき、私が真っ先に疑うのは液体の粘度です。
私も若いころ、冬場に接着剤が硬くなり、同じ設定のまま吐出量が足りなくなったことがありました。
空気圧で押し出す方式は、液が硬くなると出る量が減ってしまいます。

ピストンが押した体積の分だけ出す容積計量方式なら、粘度が変わっても量がぶれにくくなります。
吐出方式の違いや製造業での用途は、定量吐出装置メーカーのナカリキッドコントロールが書いたディスペンサー装置の意味と吐出方法の解説ページが詳しいです。
工場のディスペンサーを調べ始めた方は、最初に読んでおくと全体がつかめると思います。

まとめ

ディスペンサーは、ラテン語の「量って分け与える」から来た言葉です。
英語では、配る係の人を指すところから始まり、容器や機械を指すようになりました。

ATMもソープ容器も工場の装置も、決まった量を出すという点では同じ仲間です。
工場では、出す量の正確さがそのまま製品の品質に影響します。
身近なディスペンサーを見かけたら、何をどれだけ出す道具なのか、少し気にしてみてください。