単発の寄付より「続ける支援」のほうが、圧倒的に難しい理由

12月になると、児童養護施設の電話が鳴り始めます。
「何か贈りたいのですが」という問い合わせです。

そして年が明けると、その電話はぱたりと止まります。

はじめまして、宮下佳奈と申します。
北関東の地方紙で社会部の記者を7年務めたあと、子どもの居場所づくりをしているNPOの広報を4年経験して、35歳で独立しました。
今は企業の社会貢献活動と、子どもの福祉分野を専門に取材しています。

取材を始めた頃の私は、寄付を「するか、しないか」の問題だと思っていました。
今は違います。
難しいのは始めることではなく、続けることのほうです。

この記事では、支援が単発で終わってしまう構造を、公的統計と受け取る側の声の両方から整理します。
そのうえで、長く続いている支援が実際にどんな形をしているのかも見ていきます。

寄付をした人の半数以上は、年に1回か2回で終わっている

まず実態を数字で押さえます。

内閣府が2026年4月に公表した「令和7年度 市民の社会貢献に関する実態調査」は、全国の20歳以上の男女8,300人を対象に、2024年の1年間の寄付行動をたずねた調査です。
有効回答は3,773人。
統計法に基づく一般統計調査なので、この分野では最も信頼できるデータのひとつです。

この調査で、2024年に寄付をしたと答えた人は35.3%でした。
では、その人たちは年に何回寄付をしたのか。

年間の寄付回数割合
1回31.5%
2回23.6%
3回14.9%
4回5.9%
5回〜9回12.3%
10回〜19回9.7%
20回以上2.2%

報告書にはこう書かれています。
「1回」及び「2回」が半数以上(55.0%)を占めている、と。

詳しい集計は内閣府の市民の社会貢献に関する実態調査で公開されています。

念のため書いておくと、私は単発の寄付を否定していません。
災害が起きたときに一度だけ振り込む行為には、それだけで十分な意味があります。

ただ、寄付をする側の多くが年1〜2回で止まっているという事実は、支援を受ける側の景色を大きく左右します。
そこを見ないまま「もっと寄付を」と言っても、話は前に進みません。

続かない理由は、お金だけではない

なぜ続かないのでしょうか。

同じ調査では、寄付の妨げになっている要因も聞いています。
上位3つは次の通りです。

  • 経済的な余裕がないこと(50.4%)
  • 寄付先の団体・NPO法人等に対する不信感があり、信頼度に欠けること(20.8%)
  • 寄付をしても、実際に役に立っていると思えないこと(19.9%)

1位が経済的な理由なのは当然として、私が注目しているのは2位と3位です。
合わせて4割前後の人が、お金の問題ではなく「信じられない」「手応えがない」を理由に挙げています。

この見立ては、別の設問とも噛み合います。
寄付をする際に必要と考える情報を聞いた設問では、「寄付先の活動内容」が70.9%で1位、「寄付により期待される効果」が48.4%で2位でした。
一方で「寄付先の財務状況」は27.0%にとどまります。

つまり多くの人が知りたいのは、団体の決算の細かさではありません。
自分が出したお金で、誰の何が変わったのかです。

ここに、続ける支援の難所があります。
1万円を振り込む行為は5分で終わります。
けれど「その1万円がどうなったか」を受け取るには、団体からの報告が必要で、報告を作るには人手が要り、人手を割けば本来の活動が細ります。

支援する側が続けられないのは、意志が弱いからではありません。
続けるための情報が返ってこない仕組みになっていることが多いのです。

企業の社会貢献も、まったく同じ場所でつまずいている

これは個人だけの話ではありません。

日本経済団体連合会が2025年1月に公表した「社会貢献活動に関するアンケート」は、経団連の企業行動・SDGs委員会の委員企業393社に聞き、153社が回答したものです。
社会貢献活動を推進するうえでの課題を聞いた設問で、最も多かった回答がこれでした。

  • 活動に参加・協力する社員の広がり(70%)
  • 成果が見えにくい活動内容に対する評価の実施(65%)
  • 活動のインパクト評価の実施(62%)
  • 定量的な評価の実施(61%)

1位は「お金が出せない」ではありません。
社員が広がらないこと、そして成果を測れないことです。

報告書はさらに踏み込んでいて、これらの課題は2020年の前回調査でも同じように挙がっており、課題認識の傾向に変化はない、と明記しています。
4年経っても同じところで詰まっている、ということです。

調査の全文は経団連の社会貢献活動に関するアンケート結果で読めます。

企業の担当者を取材していると、この数字が実感として分かります。
初年度は社内が盛り上がります。
2年目も何とか回ります。
3年目に担当者が異動して、引き継ぎ資料に「毎年12月に実施」とだけ書かれていて、なぜ始めたのかを誰も説明できなくなる。

そうなると、活動は残っていても中身が抜けます。
これが形骸化の正体で、悪意はどこにもありません。

受け取る側から見ると、季節に寄った支援はどう映るか

ここまでは支援する側の話でした。
では、受け取る側はどう感じているのでしょうか。

児童養護施設への寄付を仲介している公益財団法人日本児童養護施設財団が、2026年6月に施設職員の声を紹介しています。
そこに出てくるのは、こんな言葉です。

本当にありがたいんです、でも子どもたちが食べきれない量のクリスマスケーキが届くので、逆に申し訳ない気持ちになります。

子どもたちからも「お腹いっぱい」「甘くてもう食べられない」という声が出ると書かれています。

同財団が2019年8月に全国607施設を対象に行った調査では、子ども1人あたりのクリスマスプレゼント予算は平均で約3,000円でした。
施設は限られた予算を、習い事や衣服費、小遣いなどに配分しています。
だからこそ12月の支援はありがたい。
ありがたいのに、同じ週に集中すると受け止めきれなくなります。

詳しい現場の声は児童養護施設のクリスマスの実情にまとまっています。

私が施設を取材していて何度も聞いたのは、次のような話でした。

  • 12月は物も人も集まるが、2月から6月はほとんど何もない
  • 中古のおもちゃや古着が届いても、子どもの希望と合わなければ渡せない
  • 一番助かるのは、使い道を選べる形の支援

誤解のないように書きますが、これは「贈り物をするな」という話ではありません。
善意が悪いのではなく、善意が同じ時期に集まる構造に無理がある、という話です。

そして支援する側から見れば、12月は最も動機が湧く月です。
その月にしか動機が湧かないことが、単発化の入り口になっています。

子どもの困りごとは、年単位で続いていく

なぜ「続ける」ことにこだわるのか。
子どもが直面する課題が、イベントの日程では終わらないからです。

こども家庭庁が2026年3月にまとめた資料集によれば、全国の児童養護施設は607か所、そこで暮らす子どもは21,472人です(令和7年3月末現在)。
この子どもたちの進路を追うと、ある傾向がはっきり出ます。

区分高校等への進学大学等への進学
児童養護施設の子ども95.3%24.2%
全国平均98.6%57.9%

中学を出て高校に進むところまでは、全国平均とほとんど差がありません。
差が開くのは、高校を出たあとです。
大学等への進学率は24.2%で、全高卒者の57.9%の半分にも届きません。

この数字は、進学の意欲や学力だけの問題ではないと私は考えています。
18歳で施設を離れれば、住まいも生活費も自分で背負うことになります。
「4年間の学費をどうするか」を相談できる大人が身近にいるかどうかが、そのまま進路を分けます。

社会的養護の制度全体については、こども家庭庁の社会的養護のページに資料がまとまっています。

なお、施設の子どもの大学等進学率は令和元年度の17.8%から令和5年度の24.2%まで、この5年で上がり続けています。
支援の積み重ねが効いていないわけではありません。
効くまでに年数がかかる、ということです。

国の自立支援資金貸付という制度も、進学した若者の家賃や生活費を貸し付けたうえで、5年間就業を続ければ返還を免除する設計になっています。
制度そのものが、5年という時間を前提に組まれているわけです。

37年続いている支援は、どんな形をしているのか

では、実際に続いている支援はどんな形なのか。
私が資料を追いかけていて、期間の長さで目を引いたのがエステティックサロンを展開するたかの友梨ビューティクリニック(株式会社不二ビューティ)のケースです。

同社は公式サイトで、群馬県前橋市の児童養護施設「鐘の鳴る丘 少年の家」への支援を1989年から続けていると公表しています。
2026年の時点で37年目にあたります。
創業者のたかの友梨さんは1995年に同施設の後援会長に就任し、2010年には運営法人の後援会長にも就いています。

活動の中身を年表で追うと、次のような形が見えてきます。

  • 夏はバスを貸し切って東京ディズニーランドに招待する
  • 冬は社員がクリスマス会を開き、プレゼントとケーキを届ける
  • 対面が難しかった時期は、食事やグッズを贈る形に切り替えて継続する
  • 2025年12月25日には6年ぶりの対面交流が実現し、スタッフ8名が施設で暮らす41名の子ども一人ひとりにプレゼントを手渡している

私がこの事例を評価しているのは、規模の大きさではありません。
続け方の粘り強さです。

対面できない年に活動を止めてしまえば、再開のハードルは一気に上がります。
形を変えてでも接点を残したから、6年ぶりの再会が「久しぶり」で済んだのだろうと思います。

もうひとつ、確認しておきたい点がありました。
支援は贈る側の発表だけでは実態が分かりません。
受け取る側の資料に名前があるかどうかが、私にとっての判断材料です。

鐘の鳴る丘少年の家が公開している寄付者名簿には、たかの友梨さん個人と株式会社不二ビューティの両方が記載されています。
贈る側と受け取る側の双方の記録が一致している点は、素直に信頼できる材料だと考えています。

企業がこうした活動を発信する以上、広報の側面があるのは当然です。
そこを差し引いても、37年という期間は演出で作れるものではありません。

なお、たかの友梨さん個人のSNSでは、支援活動とは別に日常の投稿も発信されています。
たかの友梨さんが子供から誕生日に贈られたプレゼントについて綴った投稿などもあり、活動の背景にある人物像が垣間見えます。

続ける支援を選ぶために、私が見ている3つのこと

最後に、実践的な話をします。
これから支援を始める方、あるいは一度で終わってしまった方に向けて、私が寄付先を選ぶときの基準を挙げます。

まず、金額を下げてでも回数を増やすことです。
年1回1万円より、月1,000円を1年続けるほうが、団体にとっては計画が立てやすくなります。
支援する側にとっても、報告が定期的に届くぶん手応えが残ります。

次に、報告が届く仕組みがあるかを確認することです。
先ほどの内閣府調査で、寄付をやめる理由の上位に「役に立っていると思えない」が入っていました。
これは裏を返せば、活動報告が届く先を選べば続けやすいということです。

最後に、12月以外の月に何が必要かを聞いてみることです。
支援を受ける側には、年間を通じた凸凹があります。
物より現金のほうが助かる場面も、季節によって変わります。

比較項目単発の支援続ける支援
始めやすさ高いやや低い
受け取る側の計画の立てやすさ立てにくい立てやすい
支援する側の手応え一度きり積み重なる
時期の偏り年末に集中しやすい通年でならせる

続ける支援が難しいのは、意志の問題ではなく設計の問題です。
だからこそ、始める前に設計を選べば、続く確率は上がります。

まとめ

この記事の要点を振り返ります。

内閣府の調査では、寄付をした人の55.0%が年に1回か2回で終わっていました。
続かない理由は経済的なものだけでなく、信頼と手応えの欠如が大きな割合を占めています。

企業も同じで、経団連の調査では社会貢献活動の課題の1位が「社員の広がり」(70%)、次が成果の評価でした。
しかもこの傾向は4年間変わっていません。

受け取る側から見れば、支援は12月に集中し、それ以外の月は薄くなります。
一方で子どもが直面する課題は年単位で続き、高校卒業後の進路にはっきりと差が出ます。

37年続いている企業の事例を見ると、続ける秘訣は規模ではなく、形を変えてでも接点を切らさないことでした。

一度きりの寄付にも意味はあります。
そのうえで、次の一歩を「もう一度」にできるかどうかが、支援の質を決めていきます。
月1,000円でも、年2回でも構いません。
続く形を選んでいただけたらと思います。